カメの甲羅は武器にもなる

カメ類の魅力と現状を中心に情報を発信していきます

成長とともに体色が変化するカメ

カメは地味な生き物だ。そう思われる方が多いと思います。しかし、カメ類の中には、成長とともに体色が劇的に変化する面白い種類がいます。それも私たちの身近に生息しているカメ類で、日本では主に2種があげられます。

 

身近と言っても、日本にもともといた種類ではなく、人間が商業利用目的で持ち込んだものなどが野外へと逸脱し、やがて定着してしまったものです。それは、クサガメミシシッピアカミミガメです。

 

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クサガメ

クサガメは中国や韓国を原産とする外来種であると考えられています。顔周りの黄色い模様や甲羅の継ぎ目に黄色い線が入る(不明瞭な個体もいます)のが特徴です。甲羅自体も茶色から淡いクリーム色がかった個体、かなり黒っぽい個体など、様々なタイプがいます。目はクリーム色で、横に黒い線が入ります。(撮影地はニホンイシガメとの交雑化が生じている地域なので、もしかしたら少し混じった個体である可能性もあります)

 

 

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クサガメ(幼体)

クサガメは幼体の時期から既に、黄色い模様が顔周りに広がっています。しかし、この個体のように甲羅の継ぎ目に、明瞭な黄色い模様が見られない個体もいます。この個体も、目はクリーム色で、横に黒い線が入っています。

 

 

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黒化したクサガメ(オス成体)

クサガメのオスは成熟すると(ほぼ)全ての個体が全身真っ黒(メラニズム化)になります。顔周りや甲羅の黄色い模様や線が消失し、目まで含めて真っ黒になります。

 

 

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黒化したクサガメ(オス成体)

濡れていた方が分かりやすいですね。見ての通り真っ黒です。たまにニホンイシガメと混同される方がいますが、日本国内で真っ黒いカメを見かけた際は、クサガメと思ってもらって問題ないです。

 

この黒化ですが、実のところ、なんのために真っ黒になるのか、その適応的意義はよく分かっていません。いくつか説はあげられているようですが、今のところ誰も定量的な評価を行っていません。面白いテーマなのに勿体ない…

 

 

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ミシシッピアカミミガメ(成体)

2種類目はミシシッピアカミミガメです。人間で言う耳がある辺りが赤くなっているのが特徴です。縁日やペットショップで見かけることが多かった種で、日本国内で最も多く買われているカメだと思われます。

 

実はこのカメ、幼体の時期と、高齢期(一部の個体)に大きく体色が変化することが知られています。ちなみにnoteでも少し紹介しました。

 

note.com

 

 

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ミシシッピアカミミガメ(幼体)

縁日やペットショップなどでよく見られたタイプです。通称ミドリガメとして扱われていますが、実はミシシッピアカミミガメの幼体なんです。幼体の時期は全身が緑掛かっており、ちゃっかりアカミミもあります。

 

 

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黒化個体(黄色いタイプ)

大きく成熟したオスの一部黒化することが知られています。写真のように、ニホンイシガメを思わせる体色をしていますが、実はアカミミガメの黒化したオスです。顔が明らかにニホンイシガメとは異なります。

 

 

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黒化個体(黄色いタイプ)

別個体です。うっすらとアカミミが見えるので、アカミミガメであることが分かります。

 

 

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黒化個体(黄色いタイプ)

お腹を見れば、ニホンイシガメとは異なることが分かります。ニホンイシガメのお腹は真っ黒ですので

 

 

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黒化個体(黒いタイプ)

中には、黄色みが抜けて黒っぽくなった黒化個体もいます。

 

アカミミガメの黒化ですが、クサガメとは異なり、全ての成熟個体が黒化するのではなく、どうも大きく成長した一部の個体が黒化していると言われています。また、環境によって、黒化個体の比率が異なることも知られています。

 

アカミミガメの黒化に関しても、いつくか論文が出版されており、黒化の適応的意義に関する説が提唱されています。この点に関しては、またどこかで紹介します。

 

ということで、今回は、カメ類の中には成長とともに体色が変化する面白い種類がいることを紹介しました。クサガメとアカミミガメの2種です。体色が大きく異なる各カメ類は、よく別種だと誤解されたり、日本固有種のニホンイシガメと誤同定されることがありますので、今回紹介したポイントに注意して、観察してみてください。

 

ではでは~