カメの甲羅は武器にもなる

カメ類の魅力と現状を中心に情報を発信していきます

春はカメ探しの季節

 

f:id:Emydura:20210407201733j:plain

日光浴をするニホンイシガメ

 

ぽかぽか陽気が増えてきた春は、カメの観察にはうってつけの季節です。

 

外温動物であるカメ類は哺乳類や鳥類などとは異なり、自力で体温を一定に保つことが出来ません。そのため、外気温や太陽光を浴びて体温を上げるため、越冬明けの暖かくなったこの時期に、多くの個体が日光浴をしている姿が観察できます。

*カメ類は変温動物と紹介されることがありますが、外気温や太陽光を利用して積極的に体温調節を行っていることから、外温動物がより適切な言葉だと言われています。

 

そこで、今回はカメを見つけるにはどのような環境を探すと良いのか、いくつかの日光浴ポイントを紹介します。

 

特によく見つかるポイントとして、川岸、流木やテトラポッドなどの人工物の上などがあげられます。

 

 

川岸

f:id:Emydura:20210407202715j:plain

川を歩いていると川岸で日光浴している個体に出会うことが多いです。

 

 

流木

f:id:Emydura:20210407202812j:plain

流木で日光浴するクサガメのオスです。特に深場が近くにある流木の上でよく見られます。

 

 

f:id:Emydura:20210407202917j:plain

日光浴をしようと流木によじ登るニホンイシガメ。下に動画があります。

 

 

f:id:Emydura:20210407202935j:plain

流木はよくニホンイシガメが日光浴しているポイントです。日光で流木も暖まっていることから、お腹側も温めることができるのかもしれません。

 

 

人工物

f:id:Emydura:20210407203103j:plain

コンクリートの上でセクシーにだらける個体

 

 

f:id:Emydura:20210407203136j:plain

テトラポッドの上で日光浴をする個体。実はこんな人工物もカメの日光浴場所になっていることがあります。

 

 

ちょっとイラっとする日光浴場所

f:id:Emydura:20210407203248j:plain

たまにイラっとする環境で日光浴する姿を見ることもあります。

この個体は調査用のカメ罠の上でだらけていました。年齢と体長のデータを取りたかったのですが、結局罠には入らずデータが取れませんでした。

 

 

最後に動画


www.youtube.com

 

このようにカメたちは色々な場所で日光浴をします。

興味がありましたら、是非とも探してみてください。

成長とともに体色が変化するカメ

カメは地味な生き物だ。そう思われる方が多いと思います。しかし、カメ類の中には、成長とともに体色が劇的に変化する面白い種類がいます。それも私たちの身近に生息しているカメ類で、日本では主に2種があげられます。

 

身近と言っても、日本にもともといた種類ではなく、人間が商業利用目的で持ち込んだものなどが野外へと逸脱し、やがて定着してしまったものです。それは、クサガメミシシッピアカミミガメです。

 

f:id:Emydura:20210402230114j:plain

クサガメ

クサガメは中国や韓国を原産とする外来種であると考えられています。顔周りの黄色い模様や甲羅の継ぎ目に黄色い線が入る(不明瞭な個体もいます)のが特徴です。甲羅自体も茶色から淡いクリーム色がかった個体、かなり黒っぽい個体など、様々なタイプがいます。目はクリーム色で、横に黒い線が入ります。(撮影地はニホンイシガメとの交雑化が生じている地域なので、もしかしたら少し混じった個体である可能性もあります)

 

 

f:id:Emydura:20210402230450j:plain

クサガメ(幼体)

クサガメは幼体の時期から既に、黄色い模様が顔周りに広がっています。しかし、この個体のように甲羅の継ぎ目に、明瞭な黄色い模様が見られない個体もいます。この個体も、目はクリーム色で、横に黒い線が入っています。

 

 

f:id:Emydura:20210402230645j:plain

黒化したクサガメ(オス成体)

クサガメのオスは成熟すると(ほぼ)全ての個体が全身真っ黒(メラニズム化)になります。顔周りや甲羅の黄色い模様や線が消失し、目まで含めて真っ黒になります。

 

 

f:id:Emydura:20210402231011j:plain

黒化したクサガメ(オス成体)

濡れていた方が分かりやすいですね。見ての通り真っ黒です。たまにニホンイシガメと混同される方がいますが、日本国内で真っ黒いカメを見かけた際は、クサガメと思ってもらって問題ないです。

 

この黒化ですが、実のところ、なんのために真っ黒になるのか、その適応的意義はよく分かっていません。いくつか説はあげられているようですが、今のところ誰も定量的な評価を行っていません。面白いテーマなのに勿体ない…

 

 

f:id:Emydura:20210328201315j:plain

ミシシッピアカミミガメ(成体)

2種類目はミシシッピアカミミガメです。人間で言う耳がある辺りが赤くなっているのが特徴です。縁日やペットショップで見かけることが多かった種で、日本国内で最も多く買われているカメだと思われます。

 

実はこのカメ、幼体の時期と、高齢期(一部の個体)に大きく体色が変化することが知られています。ちなみにnoteでも少し紹介しました。

 

note.com

 

 

f:id:Emydura:20210328201337j:plain

ミシシッピアカミミガメ(幼体)

縁日やペットショップなどでよく見られたタイプです。通称ミドリガメとして扱われていますが、実はミシシッピアカミミガメの幼体なんです。幼体の時期は全身が緑掛かっており、ちゃっかりアカミミもあります。

 

 

f:id:Emydura:20210328201415j:plain

黒化個体(黄色いタイプ)

大きく成熟したオスの一部黒化することが知られています。写真のように、ニホンイシガメを思わせる体色をしていますが、実はアカミミガメの黒化したオスです。顔が明らかにニホンイシガメとは異なります。

 

 

f:id:Emydura:20210402233238j:plain

黒化個体(黄色いタイプ)

別個体です。うっすらとアカミミが見えるので、アカミミガメであることが分かります。

 

 

f:id:Emydura:20210402233318j:plain

黒化個体(黄色いタイプ)

お腹を見れば、ニホンイシガメとは異なることが分かります。ニホンイシガメのお腹は真っ黒ですので

 

 

f:id:Emydura:20210328201515j:plain

黒化個体(黒いタイプ)

中には、黄色みが抜けて黒っぽくなった黒化個体もいます。

 

アカミミガメの黒化ですが、クサガメとは異なり、全ての成熟個体が黒化するのではなく、どうも大きく成長した一部の個体が黒化していると言われています。また、環境によって、黒化個体の比率が異なることも知られています。

 

アカミミガメの黒化に関しても、いつくか論文が出版されており、黒化の適応的意義に関する説が提唱されています。この点に関しては、またどこかで紹介します。

 

ということで、今回は、カメ類の中には成長とともに体色が変化する面白い種類がいることを紹介しました。クサガメとアカミミガメの2種です。体色が大きく異なる各カメ類は、よく別種だと誤解されたり、日本固有種のニホンイシガメと誤同定されることがありますので、今回紹介したポイントに注意して、観察してみてください。

 

ではでは~

 

 

低湿地はカメたちのパラダイス

f:id:Emydura:20210325223118j:plain

とある湿地のニホンイシガメ

よくニホンイシガメは山のカメだと言われます。水の綺麗な河川の中流から上流域にいるカメだと。

 

いいえ、そんなことはありません。ニホンイシガメは山間部にも生息するカメ、というだけです。本来は平野部から山間部にかけた広い範囲の、河川、溜池、湿地など様々な環境に生息するカメなんです。

 

しかし、様々な人為的な要因による影響を受けて各地で減少し、日本の至る所からいなくなってしまいました。そのため、現在、主に見られるのは山間部、特に河川の中流域から上流域に限られます。こういったことから、ニホンイシガメは山のカメだと誤解されているのだと思います。

 

 

f:id:Emydura:20210325222301j:plain

実は北陸にあるとある低湿地はニホンイシガメのパラダイスになっています。ニホンイシガメの主要な減少要因とされる多くの人為的な影響から逃れられているためです。

 

この湿地は決して水が綺麗とは言えません(目視での感想)。それに、河川の中流や上流といったように流れもほとんどありません。夏場の水温はかなり高いんです。

 

初めてこの湿地に来た人は、こんなところにニホンイシガメなんていないだろう。きっとそう思うはずです。

 

 

f:id:Emydura:20210325222339j:plain

とても大きなニホンイシガメのオス

この湿地に生息するオスの中には、かなり大型になる個体がいます。様々な餌生物がたくさん生息しており、水温も高いことから大きく成長できるのかもしれません。

 

 

f:id:Emydura:20210325222435j:plain

ここには0歳から10歳以上と様々な年齢構造の個体が数多く生息しており、上手く繁殖できている貴重な個体群と言えます。

 

 

f:id:Emydura:20210325222514j:plain

細長イシガメ君

個体数が多いためか、中にはおやっと思うような形態の個体も見つかります。

 

 

その他、カメ以外にも多くの貴重な在来種が生息しています。貴重な在来種と言っても、どの種も本来は日本広域に生息していた普通種です。各地で減少してしまったために、現在では希少な在来種へと仲間入りしてしまいました。

 

f:id:Emydura:20210325221617j:plain

トノサマガエル

この湿地には田んぼや水路もあるのですが、トノサマガエルがうじゃうじゃいます。うじゃうじゃです。気になった方は、是非とも自分の目で見てみてください。あいつらうじゃうじゃいますから。

 

f:id:Emydura:20210325221700j:plain

多種多様なトンボ類が生息していることでも有名です。

 

f:id:Emydura:20210325221722j:plain

デンジソウ

本来、普通種でしたが、各地で減少してしまった在来種です。

 

f:id:Emydura:20210325221754j:plain

ミクリ

これもあまり見かけなくなった在来種だそうです。

 

f:id:Emydura:20210325221822j:plain

ヒメビシ

これも同じ。

 

f:id:Emydura:20210325221856j:plain

隔離飼育中の雑種とちらっとクサガメさん

これはニホンイシガメとクサガメの雑種です。実はこの湿地には外来種クサガメが侵入していて、ニホンイシガメと交雑しています。外来種との交雑は問題です。

 

雑種には稔性があることが明らかにされており、遺伝的攪乱を通して、純粋なニホンイシガメがいなくなってしまうのではないか、といった懸念があります。また、ニホンイシガメのメスに外来種クサガメのオスが求愛や交尾をしてしまうと、本来ニホンイシガメが生むはずであったニホンイシガメが減少してしまいます。これは繁殖干渉と呼ばれており、近縁な外来種が在来種を駆逐し得るメカニズムの1つとして注目されています。

 

ということで、ここでは日本固有種のニホンイシガメを絶滅させないために、ニホンイシガメの減少に繋がる可能性のあるクサガメと雑種は野外から除去しています。

 

除去するといっても殺処分ではありません。個体数自体も多くなく、人が管理できる範囲のため、隣接する隔離施設で飼育中です。また、里親制度も実施しており、今のところ大規模な殺処分をしなくてはいけない状況ではありません。

 

もし興味がある方は、この隔離施設でのんびり暮らしているクサガメや雑種に会いに行ってみてください。

 

f:id:Emydura:20210325221953j:plain

黒化中の雑種のオス

これは雑種のオスの顔です。クサガメの血が入っているからか、雑種のオスの中には、クサガメと同様に黒化する個体がいます。これは黒化途中の個体の横顔です。

 

今回はニホンイシガメのパラダイスである低湿地を紹介しました。気になる方は是非とも行ってみてください。ここでは名前はあえて書きませんが、色々と調べれば簡単に場所が分かるかと思います。

 

ではでは~

愛してやまない養老川

愛してやまない千葉県の川を紹介していきます。主に房総半島を流れる河川です。

まずは私が最も愛している川の養老川です。この川は、私が人生で初めてニホンイシガメに出会った、思い出が詰まった川になります。今回は主に上流部です。

 

f:id:Emydura:20210328203127j:plain

養老川上流域

 

 

f:id:Emydura:20210323213149j:plain

養老川上流域

この景色がとても好きです。

 

 

f:id:Emydura:20210323213307j:plain

養老川上流域

 

中流域から上流域にかけて、個体数はごく僅かですがニホンイシガメが残っています。ただし、どこも高齢個体ばかりであり、上手く繁殖できていないようなポイントばかりです。瀬と淵が交互にあるような上流的な環境であり、止水や流れの緩やかな環境を好むクサガメミシシッピアカミミガメはほぼ生息していません。

 

 

f:id:Emydura:20210323213743j:plain

川底にいたニホンイシガメを拾いました

ごく僅かに残っています。

 

 

f:id:Emydura:20210323214006j:plain

弘文洞跡

観光スポット的なものもあります。

 

 

f:id:Emydura:20210323214147j:plain

粟又の滝

ここも観光スポット。夏場は多くの人が遊びに来てカオスな状態になります。ビーチ並みに人が集まります。子供にとっては良いお魚遊びポイントなので、おすすめでもあります。

 

 

多くの爬虫両棲類が生息していることも、この川が好きな理由です。

f:id:Emydura:20210328202601j:plain

ニホンイシガメ

 

 

f:id:Emydura:20210328202703j:plain

アオダイショウ

 

 

f:id:Emydura:20210328202730j:plain

シマヘビ

 

 

f:id:Emydura:20210328203501j:plain

ヤマカガシ

 

 

f:id:Emydura:20210328202832j:plain

モリアオガエル

 

 

f:id:Emydura:20210328202920j:plain

シュレーゲルアオガエル

 

今回はこんな感じです。

中流部から下流部はまた今度。

 

ではでは~

モリアオガエルの死体を摂食するアメンボたち

f:id:Emydura:20210322224618j:plain

モリアオガエルの死体に群がるアメンボたち

 

アメンボ類が脊椎動物の死体に群がり、摂食している瞬間を発見し、観察記録として発表しました。

 

以下の論文です。

加賀山翔一 (2020). アメンボ類によるモリアオガエル成体の摂食事例. 千葉生物誌 69(2) : 48-49.

 

ただ、この論文では写真がモノクロになってしまい、摂食の瞬間が見えにくかったのでカラー版の写真を貼りました。色々な角度から複数枚撮っていたので、論文では使用していない写真になります。

 

また不思議な現場に出くわしたときには、しっかりと記録を取り、どこかに発表したいなと思います。

 

 

和亀を守るには情報発信が必要だ

どうしても守りたい在来カメ類を絶滅させないためには、現状や魅力を社会へと発信し、カメたちのファンを増やすのが手っ取り早いと思ったので、カメに特化したブログを作りました。

 

個人サイトでも情報発信をしていたのですが、何故かとても恥ずかしくなったので、無料のブログサイトで情報発信を再開させます。

 

f:id:Emydura:20210322222940j:plain

愛してやまないニホンイシガメ

 

ちなみに個人サイトなどなどはこちら

kagashaw.jimdofree.com

 

note.com

 

twitter.com