カメの甲羅は武器にもなる

カメ類の魅力と現状を中心に情報を発信していきます

低湿地はカメたちのパラダイス

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とある湿地のニホンイシガメ

よくニホンイシガメは山のカメだと言われます。水の綺麗な河川の中流から上流域にいるカメだと。

 

いいえ、そんなことはありません。ニホンイシガメは山間部にも生息するカメ、というだけです。本来は平野部から山間部にかけた広い範囲の、河川、溜池、湿地など様々な環境に生息するカメなんです。

 

しかし、様々な人為的な要因による影響を受けて各地で減少し、日本の至る所からいなくなってしまいました。そのため、現在、主に見られるのは山間部、特に河川の中流域から上流域に限られます。こういったことから、ニホンイシガメは山のカメだと誤解されているのだと思います。

 

 

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実は北陸にあるとある低湿地はニホンイシガメのパラダイスになっています。ニホンイシガメの主要な減少要因とされる多くの人為的な影響から逃れられているためです。

 

この湿地は決して水が綺麗とは言えません(目視での感想)。それに、河川の中流や上流といったように流れもほとんどありません。夏場の水温はかなり高いんです。

 

初めてこの湿地に来た人は、こんなところにニホンイシガメなんていないだろう。きっとそう思うはずです。

 

 

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とても大きなニホンイシガメのオス

この湿地に生息するオスの中には、かなり大型になる個体がいます。様々な餌生物がたくさん生息しており、水温も高いことから大きく成長できるのかもしれません。

 

 

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ここには0歳から10歳以上と様々な年齢構造の個体が数多く生息しており、上手く繁殖できている貴重な個体群と言えます。

 

 

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細長イシガメ君

個体数が多いためか、中にはおやっと思うような形態の個体も見つかります。

 

 

その他、カメ以外にも多くの貴重な在来種が生息しています。貴重な在来種と言っても、どの種も本来は日本広域に生息していた普通種です。各地で減少してしまったために、現在では希少な在来種へと仲間入りしてしまいました。

 

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トノサマガエル

この湿地には田んぼや水路もあるのですが、トノサマガエルがうじゃうじゃいます。うじゃうじゃです。気になった方は、是非とも自分の目で見てみてください。あいつらうじゃうじゃいますから。

 

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多種多様なトンボ類が生息していることでも有名です。

 

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デンジソウ

本来、普通種でしたが、各地で減少してしまった在来種です。

 

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ミクリ

これもあまり見かけなくなった在来種だそうです。

 

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ヒメビシ

これも同じ。

 

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隔離飼育中の雑種とちらっとクサガメさん

これはニホンイシガメとクサガメの雑種です。実はこの湿地には外来種クサガメが侵入していて、ニホンイシガメと交雑しています。外来種との交雑は問題です。

 

雑種には稔性があることが明らかにされており、遺伝的攪乱を通して、純粋なニホンイシガメがいなくなってしまうのではないか、といった懸念があります。また、ニホンイシガメのメスに外来種クサガメのオスが求愛や交尾をしてしまうと、本来ニホンイシガメが生むはずであったニホンイシガメが減少してしまいます。これは繁殖干渉と呼ばれており、近縁な外来種が在来種を駆逐し得るメカニズムの1つとして注目されています。

 

ということで、ここでは日本固有種のニホンイシガメを絶滅させないために、ニホンイシガメの減少に繋がる可能性のあるクサガメと雑種は野外から除去しています。

 

除去するといっても殺処分ではありません。個体数自体も多くなく、人が管理できる範囲のため、隣接する隔離施設で飼育中です。また、里親制度も実施しており、今のところ大規模な殺処分をしなくてはいけない状況ではありません。

 

もし興味がある方は、この隔離施設でのんびり暮らしているクサガメや雑種に会いに行ってみてください。

 

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黒化中の雑種のオス

これは雑種のオスの顔です。クサガメの血が入っているからか、雑種のオスの中には、クサガメと同様に黒化する個体がいます。これは黒化途中の個体の横顔です。

 

今回はニホンイシガメのパラダイスである低湿地を紹介しました。気になる方は是非とも行ってみてください。ここでは名前はあえて書きませんが、色々と調べれば簡単に場所が分かるかと思います。

 

ではでは~