カメの甲羅は武器にもなる

カメ類の魅力と現状を中心に情報を発信していきます

その子ガメ、実は大人です。

先日、気分転換に某水ぜんぶ抜く番組を見ていたのですが、多くのニホンイシガメが捕獲された映像の中で、たくさんの子ガメが見つかったと喜んでいる場面がありました。

 

あのシーンで子ガメと呼ばれていたカメですが、実はもう大人なんですよね。俺にはオスの成体にしか見えなかったです。

 

ニホンイシガメは最大背甲長が200mmほどになるカメですが、実はオスとメスで体サイズが大きく異なります。

 

大きく成長するメスとは異なり、オスは背甲長が145mm程度で止まってしまいます。ですので、このことを知らずにメスとオスを比べてしまったがために、大人のオスを子ガメと表現してしまったのでしょう。

 

 

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ニホンイシガメ(メス)

メスは最大で200mm程度まで成長します。背甲長150mmを超える個体が成熟していると考えられています(中には未成熟個体もいます)。

 

 

 

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ニホンイシガメ(オス)

オスは最大で145mm程度になります。しかし、ここまで大きくなる個体は稀で、100-120mmくらいのオスがよく捕獲されます。また、背甲長80mmを超えた個体が成熟していると考えられています。

 

ですので、野外で捕まるオスの多くはメスに比べると圧倒的に小さいです。大人になっても、小さいんです。

 

この80mm程度の個体ですが、たいてい3歳以上の個体で、まれに2歳でこのサイズを超えているものがいます。

 

年齢から考えると子ガメと呼んでも間違いではないですが、既に成熟している可能性が高いので、子ガメと言われると、あれ、と思ってしまいます。

 

あの映像での説明は特に問題ではないと思いますが、見た感じでは明らかに80mmを超えたオスだったので、オスの成体ですと紹介したほうが良かったのではないかと思ってしまいました。俺があのカメだったら、子ガメと言われ、キレていたことでしょう笑

 

 *稀に170mmを超えるようなバカでかいオスが見つかることがあるのですが、よく見るとクサガメの特徴が混じっていたり、クサガメと中間の形質をしていたりと、どう見ても雑種でした。ということで、注意深く見る必要があります。

 

 

ちなみに、私が思う子ガメは以下のような感じです。

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生まれてまもない孵化幼体

0歳の個体です。

 

 

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幼体

1歳ほどの幼体です。これも子ガメです。

 

 

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幼体

1歳ほどの幼体を持ってみました。サイズ感はこんな感じです。

 

 

ということで、今回はニホンイシガメのオスとメスの最大背甲長が大きく異なること、子ガメと呼んでいる個体には大人のオスが紛れている可能性があることを紹介しました。

 

成熟しているオスなのに子ガメだと間違われる個体がいなくなることを願っています。

 

 

ちなみに、丘陵地に生息する個体群の成長曲線

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(Kagayama 2020のデータを用いて再作成)

 

 

ではでは。

 

 

参考文献